朋友統括施設長とCotti菜スタッフ

社会福祉法人 朋友 統括施設長 豊田 悦子さん
Cotti菜 スタッフ 篠木 優果さん
インタビュアー 山下 広幸(NPO法人 障害者雇用創造センター 理事)

障がいを持ったスタッフが元気にいきいきと明るく働いている姿を見てください。

お客様から「美味しかったよ」とか「ありがとう」といった言葉をもらうことが、私のやりがいです。
山下 はじめに、Cotti菜のコンセプトを教えてください。

豊田 元々は県のステップアップカフェ事業です。三重県の障害者雇用率が低迷している中、何とかしようという話から、行政と労働界・経済界・福祉関係の人たちが力を合わせて障害者雇用に取り組もうという想いからできあがった事業です。Cotti菜では安心で安全な野菜を食べてもらって健康づくりを支え、ゆっくりと落ち着いてくつろいでもらえるような空間と料理の提供を目指しています。

山下 障害者雇用率を改善するために県が取り組んでいる事業ということは、Cotti菜スタッフのほとんどが障がいを持った方ということですか?

豊田 障がいを持ったスタッフは現在11名ですね。常時7〜8名の方にお仕事していただいております。職員が沢山居て、障がい者の方は出来る所を少しだけして、出来ない部分は職員がするという形ではないです。メインで戦力となって働いているのが障がいを持ったスタッフです。職員は補助をするだけです。

山下 篠木さんは、実際にどのようなお仕事をされているのですか?

篠木 全般やっています。調理や接客はもちろん、在庫の資料を見ながら発注をかける、といった管理もしています。

山下 篠木さんは飲食店でのお仕事は初めてだという事ですが、慣れなかった点はありますか?

篠木 最初はすごく緊張してばかりで、オープンした当初はお客様になんて話しかけたらいいかもわからなかったです。料理も元々得意ではなく、包丁さえほとんど持ったこともなかったので戸惑いが多くありました。今では緊張することも少なくなり、自信を持って接客できるようになってきたと思います。最近では満席で待ち時間が長くなってしまうことが、せっかく来てもらったのに申し訳ない気持ちになります。身だしなみも、Cotti菜で働くまではほとんど気を使ったこともなかったのですが、今ではメイクや身だしなみに気を使うようになりました。オープンしてから3ヶ月経ち、仕事にもだいぶ慣れてきました。

山下 仕事に慣れてきた中で、働き甲斐がある点はどんな所でしょうか?

篠木 実際にお客様から『美味しかったよ』とか『ありがとう』といった言葉をもらうことが、私のやりがいです。

山下 企業の障害者雇用について、飲食店の企業での障害者雇用はすごく難しいというイメージがあるようですね。ホールや厨房など、障がいによってできる仕事が異なるし、障がいや特性に見合った仕事を準備することができないでいるようですが、Cotti菜ではどうですか?

豊田 今でも、まだまだ経験や研修が必要なスタッフもいます。逆に居なくては困るというくらいに成長してくれたスタッフもいます。そういったスタッフが接客させていただいた時には特に、障がいを持っていると思えないという声もよくお聞きします。

山下 障がいを持った方でも、これだけ働く能力があると分かれば企業の意識も変わってきますよね。企業からの反響はいかがですか?

豊田 企業から新入社員の研修として見学に来られることもあります。経済界の方にもCotti菜を応援していこう、という気持ちを持って頂いていて凄くありがたいです。元々の発端が経済界の方からの県への提案だったこともあり、会議のお弁当を注文していただくという事もあります。

山下 経済界からの提案が県へと伝わり、県からのステップアップカフェ事業が経済界の意識改革につながっているのですね。企業の意識をより良い方向に変えていくためには障がい者のさらなる活躍が必要ということで、障がいをお持ちの働けていない方や自信を無くしている方にメッセージをいただけますか?

篠木 楽しみながら一生懸命にやれば、周りの方が理解してくれて、働きやすい環境になっていくと思います。だから障がいを持っている事は関係なく、気にしないで頑張ってもらえたらなと思います。

山下 周囲の理解はとても大切なことですよね。出会いがなかったから、情報を知らないから機会を逃すという事もあり、その人の目に届く場所や媒体が多く存在すれば、障害者雇用は浸透していくのではないかと思います。

豊田 知ってもらわないと始まらないという事はありますね。

山下 Cotti菜というお店の最大のウリはなんですか?

豊田 障がいを持ったスタッフが生き生きと働いている姿です。後は、新鮮な野菜を使ったサラダバー、そして野菜スムージーです。メニューは現時点では少ないですが、少しずつ増やしていくことによってお客様に来るたびにメニューが変わる楽しみを感じていただければいいなと思っております。

山下 最後に、障がいを持っている方へのメッセージをお願いします。

豊田 障がいを持った方の中には、サービス業や接客は無理だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、そう思っている方が成功した時というのは、私たちの倍以上の喜びがあると思うのです。ですからぜひ一歩踏み出して、訓練や実習、体験をしていただければと思います。

山下 本日はありがとうございました。